

JR東日本大井町駅周辺で
新しいまちづくりが進む!
- 荒谷 清志さん
- 株式会社竹中工務店 東京本店 作業所長
JR東日本グループは、浜松町駅からJR東日本大井町駅に至る「東京南エリア」のまちづくりを推進しており、現在、その柱のひとつとなる「大井町駅周辺広町地区開発」が進行中です。本工事の施工管理は㈱竹中工務店が受注し、カイケンOBである荒谷清志さんが現場の作業所長を務めています。鉄道が近接するハードな現場への思いを広町の作業所でうかがいました。
JR東日本大井町駅周辺で進む広大な地区開発
カイケンOBが現場の施工管理を担う
JR東日本大井町駅が近づくと、車窓から多くのタワークレーンが見え、「大井町駅周辺広町地区開発」のスケールを実感しました。荒谷さんから見た、このエリアの特徴とプロジェクトの魅力はどのようなものですか?

JR東日本 開発街区のイメージ(南側上空より計画地を望む)
2023年3月7日付JR東日本プレスリリース掲載資料より引用
まずエリアの特徴ですが、ここはJR京浜東北線の大井町駅西口から徒歩7分の距離に位置する、駅前の好立地です。土地の所有は大半がJR東日本の私有地であり、かつては大規模な社宅が建っていました。また敷地内にはJR東日本の車両工場が稼働中ですから、近隣住民の皆さんにとってこのエリアは、あまり認知されていない場所だったと思います。時を経て今回、この広町地区に新しくオフィスや商業施設、ホテル、賃貸住宅といった大規模複合施設を建設し、エリア全体に新たな賑わいの創出を目指すのが、本プロジェクトの大枠です。
一方、大井町駅に目を向けますと、鉄道3路線が乗り入れているため、ラッシュ時には乗り換えに時間を要し、人がスムーズに流れにくい状況になっています。今回のプロジェクトでは、駅舎自体の改良・増築、そして新しい改札口を設けて広町方面へ直接アプローチできるよう計画されています。近隣住民の方たちにとっては、これまで利用する機会がなかった広町エリアに新しい街が生まれ、駅とその周辺の動線や利便性が格段に向上するため、完工時にはこの街の暮らしに大きなメリットが生じるものと確信しています。
プロジェクトにおける竹中工務店の関りと、荒谷さんの役割を教えてください。
JR東日本が事業主体となる本プロジェクトの競争入札に当社が参加し、施工管理を受注したかたちになります。現在この現場に常駐している私を含む3人で、入札要綱に基づく施工計画や技術提案の計画を作成しました。自らプレゼンテーションを行いましたので、思い入れがとても強く、大きな責任感をもって現場に立っています。
作業所(現場)の竹中工務店事務所には所員が約120人常駐しています。そのほか協力会社作業員は約450人、ピーク時には2,000人超えになります。ここには総括作業所長の下に作業所長3人を配置しており、その1人が私になります。その中での私の役割は、日々のマネジメント業務とともに、この現場で最もハードな鉄道が近接したエリアの施工管理を私のチーム10人で担当しています。

2023年3月7日付JR東日本プレスリリース掲載資料より引用
鉄道施設が近接する難しい現場
計測器を用いて1ミリ単位で安全を管理
鉄道が近接したエリアの施工管理とは、どのようなものになりますか?
このエリアは、敷地の東側にJR京浜東北線と東海道線、南側に東急大井町線、地下にはりんかい線が走っています。さらに北側には山手線の収容線(車両基地)があり、まさに鉄道施設に囲まれた中で工事を行っています。
今回のプロジェクトにはJR東日本大井町駅の改良・増築計画があり、構造的には、既存の線路の真上に建物を造ることになります。増設する建屋を支える柱を造るために、線路と線路の間に杭を打って柱を立てる「杭工事」に取り組んでいます(線路と線路の間に穴を掘削し、そこへ鉄筋を入れてコンクリートを流し込む工事)。杭と線路の距離は、最も接近した箇所で2メートル弱であり、そこへ架線を越えてクレーンで資材を運び込むため、安全管理には十分注意をしています。
鉄道が近接したエリアの作業は、終電から始発までの深夜・早朝に限られます。準備や撤収の時間も入れると杭工事などは実質2時間しかできません。この作業を1カ月積み上げ、ようやく柱が1本立つという進捗計画です。現場周りの鉄道施設には、各所に様々な計測器を設置し、24時間体制でモニタリングをしながら鉄道施設や線路に変化がないか1ミリ単位で計測しながら作業を行っています。
このプロジェクトで最も気を付けている点は、やはり安全面の確保ということですか?
もちろん、そういうことになります。近接する3路線の鉄道を、常に安全かつ安定的に運行させること。そしてクライアントや鉄道利用者、近隣住民の方々に丁寧な対応をこころがけ、極力ご迷惑をおかけしないようにすること。これがプロジェクトの第一優先事項です。現場には現在、作業をリアルタイムに映すWEBカメラが各所に設置され、事務所のモニターやパソコンで、工事の進捗を常時見ることができます。私は自宅のパソコンでも深夜作業を見る時もあり、今は四六時中、仕事のことを考えている毎日です。それだけ難しい現場であると実感しています。
仕事の面白さややりがい、大切にしているのはどのような点でしょう。
とてつもなく大きな物が目の前で造られていく過程を最前線で見ることができる!これが仕事の面白さだと思いますね。そして造る過程を準備段階から創造し、計画を立案して実行していくことが仕事の醍醐味だと思います。自分が施工計画を行ったプロジェクトを自ら施工することにもやりがいを感じます。
私はこの現場で作業所長を務めておりますが、マネジメント面では、Q(Quality=品質)、C(Cost=原価)、D(Delivery=工期)、S(Safety=安全)、E(Environment=環境)、M(Morale=モラル)をバランス良く管理することが重要だと考えています。この6つの概念を適切に理解し実践することが、より良い建築や都市環境の実現につながると思っています。加えて、全てのステークホルダーとコミュニケーションを密に取り、風通しの良い職場環境をつくることを一番意識しています。そうしたトータル・マネジメントを他の所長と連携して推進することが私の使命であり、大切にしていることです。
これまで出会ったすべての仕事が今のキャリアの礎になっている
今まで携わってきた仕事や、印象に残っているエピソードを教えてください。
新卒で入社したのは鉄道関連の工事に強い企業でした。3年目から鉄道工事に携わり、JR東日本の鉄道工事に必携となる「工事管理者(在来線)」の資格を取得しました。両国駅や舞浜駅の改修工事などに従事しながら知識と技術を磨き、この領域でキャリアを積みました。
社会人13年目からは竹中工務店に所属し、縁あって再び鉄道関連の工事に携わることとなり、自分がこれまで培ってきた知見を社内に落とし込んでいきました。そうした積み重ねが、横浜駅の駅ビル「NEWoMan横浜」の大きな仕事につながりました。横浜は1日平均の乗車人員が約34万人の巨大ターミナル駅であり、そのお客様を作業エリアに通行させながら工事を行う状況でしたので、幾多の困難や苦労を乗り越えて無事にオープンした時には、ひときわ感慨深いものがありました。
鉄道以外では、某大手お菓子メーカーの日本最大級のアイスクリーム工場を造ったことも印象深いです。アイスクリームの製造方法や製造過程をとことん勉強して仕事に臨みました。–30度の冷凍倉庫を筆頭に+80度の温蔵庫まで、様々な温度帯の部屋を作る仕事は、防熱・防湿的に難しい作業が多く、品質管理には本当に苦労しました。今でもそのメーカーのアイスを食べると、当時の苦労が蘇ります。
これまで携わった案件を改めてふり返ると、出会ったすべての仕事が勉強と挑戦の連続であり、その継続が今のキャリアの礎になっていると感じます。そして特に専門性が高い鉄道関連の工事については、竹中が本格的に参入し始めた当初から陣頭に立ち、事業拡大への突破口を切り拓いてきたと自負しています。この領域のスペシャリストであるというプライドを原動力に、大井町の本プロジェクトも頑張っています。

駅直結の待合せスペースとして利用される広場のイメージ

重層的な歩行者ネットワークと一体となって賑わう広場のイメージ

ホテルや賃貸住宅から見渡せる夜景と車両基地

改良する大井町駅東口駅舎(3階)
2023年3月7日付JR東日本プレスリリース掲載資料より引用
学生時代の思い出は?

大学ではコンクリート構造工学の研究室に所属していました。卒研は企業と合同で取り組み、工場で有孔梁などの試験体を製作し、何トンの荷重をかけたら最初にどこにクラックが入るか、という研究を行いました。こうした実験はとても面白かったですね。研究室の先輩に、今はカイケンの教授になった福井さんもいて、合宿で盛り上がったのも懐かしい思い出です。授業は真面目に出席したので、一級建築士の試験も一発合格し、『日大がこの試験に強い!』という評判に納得することができました。
またテニスサークルに所属し、暇さえあればテニスコートにいましたね。就職面接の日にも試合があり、試合終了と同時に会場へ駆け付けたので、まったく緊張せずにのびのびと面接に臨むことができました(笑)。それぐらいテニスに熱中した青春時代を過ごしたのだと思います。
カイケン生へメッセージをお願いします。
自分のやりたいこと、好きなことに、とことん打ち込む経験をしてほしいと思います。何かに熱中した経験をもつ人は、例えば就活でも自分の言葉でホンキ度を熱く語ることができるのではないでしょうか。そういう人は仕事も伸びるし、目の前の課題に粘り強く取り組むことができるものと私は思います。研究でもスポーツでも、ひとつ夢中になれるものを見つけて、充実した学生生活を送ってください!
プロフィール
- 荒谷 清志 さん(あらたに きよし)
- 株式会社竹中工務店 東京本店 作業所長

1995年日本大学理工学部海洋建築工学科卒業。同年、鉄建建設株式会社に入社。建築工事の現場経験や鉄道工事の経験を積む。2007年㈱竹中工務店に入社。2011年JR東日本東中野駅ビル、2015年JR東日本横浜駅西口開発ビルなどのJR関係の施工を担当。その他、生産施設(工場)、新市庁舎工事の施工管理経験を経て、2020年より技術部に配属となり様々なプロジェクトの施工計画を担当。現在はJR東日本の「大井町駅周辺広町地区開発」の工事に従事している。